CDPとは?顧客データを統合管理するメリット・マーケティングへの活用方法をわかりやすく解説
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ここ数年で一気に注目が集まり、導入する企業も増え続けている「CDP(カスタマーデータプラットフォーム)」。
顧客理解を深めるためのデータマネジメントソリューションの一つですが、
・ 具体的にどんな活用ができるの?
・ DMPやCRMと何が違うの?
・ CDPにはどんな種類があって何ができるの?
などの疑問が解消されず、導入に踏み切れない企業様も多いのではないでしょうか。またすでにCDP導入は決定していても、CDPベンダーを選ぶ軸に悩んでいる方もいることでしょう。
本記事では、CDPとはどのようなシステムなのか、メリットや活用方法、他のデータマネジメントソリューションとの違いを解説していきます。
CDPとは?
CDPのメリット4つ
CDPの具体的な活用方法に移る前に、CDPを導入するメリットを整理していきましょう。
・ 顧客データの一元化
・ ビジネスアジリティを高める
・ データの民主化(情報共有)
・ 効果的な顧客体験(CX)を与える
以下、それぞれのメリットを詳しく見ていきます。
顧客データの一元化
企業が持つ顧客データソースは、実店舗・メルマガ・SNS・WEBサイト・問い合わせなど多岐にわたります。CDPでは、こうした幅広いタッチポイントから得られるデータを収集し、さらに分析まで一元管理ができるようになります。
データがばらばらに管理されているデメリットは、扱いにくいだけではありません。
たとえばすでにリピーターとなっている顧客に対し、新規顧客向けの情報を発信してしまうなど、正しい施策を打てないケースも発生してしまいます。
顧客データの一元管理は、顧客の優先順位やニーズを見極める上で、重要なポイントです。
ビジネスアジリティを高める
CDP無しで複数のツールからデータを集めて分析まで行う場合には、膨大な時間と労力がかかります。それに加え、消費者の行動は、時代やテクノロジーの変化に応じて変わっていくものです。
常に変化するトレンドに合わせ、手作業でデータ分析を進め、最適な施策につなげていくことは容易ではありません。しかしCDPが基盤となっている場合には、データ収集・分析をCDPに任せておくことができます。
データ収集・分析にかかる時間と労力を削減し、施策実行までのビジネスアジリティを高められることは、企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
データの民主化(情報共有)ができる
「データの民主化」とは、組織全体での情報共有を適切な状態にすることです。データの民主化により得られるもっとも大きな効果は、意思決定の質とスピードの向上。
組織全体で情報の透明性が高まり、連携がスムーズになることにより、データを根拠とした質の高い意思決定までのスピードが上がります。
しかし従来の方法では、データアクセスの制限やセキュリティ面などの理由から、データの民主化には大きな課題もあります。
CDPでは、セキュリティの安全性を保ちながら、組織全体でさまざまな部門の顧客データを民主化することができます。たとえば新たなサービスの開発時に、問い合わせ履歴のデータにアクセスできれば、顧客のニーズ理解を深めることが可能です。
このようにCDPを活用した施策実行は、データを根拠とした、より効果的なものになるのです。
効果的な顧客体験(CX)を与える
時代の変化により、顧客が使うデバイスやチャネルはどんどん種類が増えていきます。さまざまなデバイスやチャネルを利用する顧客が求めるのは、一貫性のある顧客体験です。
たとえば、すでに購入済みの商品が何度もオンライン上で宣伝されることは、顧客にとって「望ましくない顧客体験」となるでしょう。また一方で、何度もSNSから購入をしている顧客にとっては、SNS上でのキャンペーン情報が「望んでいた顧客体験」となるはずです。
このように顧客体験を向上させるためには、顧客それぞれの行動把握が必要不可欠なポイントです。そこでCDPを導入した企業は、顧客の行動をすべて正確に把握できるようになり、顧客体験に変化が生まれます。
顧客が企業と接するすべてのフェーズにおいて、より優れた情報やサービスを提供し、顧客ロイヤリティを向上させることは、直接的な利益向上につながる大きなメリットです。
CDPの活用方法
ここからは、より具体的なCDPの活用事例を紹介していきますので、ぜひ自社に導入する場合の活用方法をイメージしながらチェックしてみましょう。
ただし、CDPは種類によって細かい活用方法が異なります。その点については後述する「CDPの種類」にて解説しますので、そちらを参考にしてください。
データの収集
まずCDPの主要な活用方法としてあげられるのが、データ収集です。
CDPでは、以下のようなツールと連携させることにより、オンライン・オフライン問わず、あらゆる顧客データを半永久的に収集し続けます。
・ webアクセス解析ツール(Google Analyticsなど)
・ CRM / SFAツール
・ ECサイト・購買データ管理ツール
・ ID-POS
どのようなデータを収集するのか、具体例を見ていきましょう。
・ 顧客の基本情報(メールアドレス・住所・電話番号など)
・ 顧客の購買履歴
・ スマホアプリのログ
・ サイトの行動履歴
・ 位置情報
口コミなど民間企業からの情報や、国勢調査など公共団体からの情報収集も可能です。
データの統合(顧客ID)
CDPでは、データ上のユーザーを1人の顧客として管理できるように、複数の異なるデバイスやチャネルにある顧客データを統合します。いわゆる「名寄せ処理」と呼ばれるシステムです。
たとえば、「Aさん」という同一人物が「ECサイトで購入をした」「自社サイトのブログを読んだ」「実店舗で新商品を購入した」という3つのタッチポイントに存在する場合、名寄せをしなければデータ上は「別人」として処理されてしまいます。
この状態ではAさんに対して、不要な情報やサービスを提供してしまっているかもしれません。しかし数多くのタッチポイントから、手作業で顧客IDを割り当てるのは、ほぼ不可能です。
CDPでは、すべてのタッチポイントにおける顧客データを統合し、顧客IDを自動的に割り当てることができます。
ターゲットを絞った広告
代表的なCDPの活用事例は、ターゲットを絞った広告の作成です。
顧客のセグメント化は、広告を作成するときの一般的な方法ですが、範囲が広すぎて思うような効果を得られないことも多くあります。
CDPでは、顧客データと広告データを紐づけられるため、マーケティング担当者は「優先順位の高い顧客」「離脱する可能性が高い顧客」を、瞬時に見極めることが可能です。
同じセグメント化でも、より細かく分類できるのがCDPであり、機械学習ベースでより正確なターゲット分析を実現します。
ビジネスツールとの連携
CDPの主要な活用方法には、さまざまなビジネスツールと連携させることもあります。メルマガ配信など直接的な顧客アプローチの機能が搭載されていないCDPでも、各種ビジネスツールとの連携は可能。
例えばMAやCMRと連携すれば、メルマガ配信やキャンペーン情報の提供で、顧客層を絞り込めるようになります。
在庫管理
CDPのデータ管理と予測分析を合わせると、企業は適切な在庫管理もスムーズに維持できるようになります。具体的にはCDPの予測スコアリングにより、担当者は「購入する人」「離脱する人」などを把握し、より正確な需要を予測できます。
そこからチャネル全体の在庫データと合わせ、適切な数の在庫を揃えておけるようになるでしょう。
部門別での活用
経営層やマーケティング部門、実店舗など、企業にはさまざまな部門があります。CDPは、これら細かい部門のニーズに合わせた活用が可能です。
たとえば経営層では、CDPにおける顧客データの統合と可視化による意思決定を迅速にします。またCDPはオンラインとオフラインのデータ統合ができるため、顧客の行動を一連で把握できるように。
カスタマーサポート部門においても、データの一元化と可視化は役に立ちます。顧客からの問い合わせ内容に予測がつくため、コールセンターでの工数も削減できるでしょう。
業界別の活用
CDPは、ほぼすべての業界で活用できるシステムです。以下で、いくつか代表的な例を見ていきましょう。
アパレル業界
アパレル業界では、実店舗・アプリ・ECサイトなどさまざまなチャネルにおける顧客データをCDPで統合し、顧客にとってより便利で使いやすい買い物のシステムが構築できます。
不動産業界
新規顧客の接点から商談、成約まで、それぞれのデータを分断せずに管理できます。これにより、即決しないケースでも、契約率向上のための適切なフォローが実現。また、事業展開している場合には、CDPによるデータの一元管理と共有が役立ちます。
メーカー
BtoBtoC型のビジネスモデルであるメーカーは、顧客との直接的な接点が極端に少ないことが課題となりがちです。CDPによって「オウンドメディアのブログを読んでいる顧客」や「カスタマーサポートに多い問い合わせ内容」などのデータが把握できるようになります。
CDPの顧客保護・コンプライアンスについて
CDPでデータを扱うようになると、データ取り扱いの信頼性が上がります。まずCDPによって収集・統合されるデータはすべて同意属性に基づいているため、規制遵守によるデータ管理がなされます。
さらに顧客データが一元化されることにより、特定の顧客データが孤立することがありません。例えば顧客から「自分の情報がどこから入手されているか」という問い合わせがあった場合にも、スムーズな特定ができます。
CDPの種類はさまざま!違いをおさえてから選ぼう
「CDP」とひと口に言っても、実はさまざまな種類があり、提供企業によって特徴が異なります。以下で、CDPの種類と主要なCDPベンダーを見ていきましょう。
CDPの種類
・ 分析特化型
・ 配信ツール連携型
・ WEB接客ツール連携型
・ キャンペーン連携型
分析特化型のCDPでは、収集したデータを顧客IDと紐づけし、顧客プロファイルを組み立て、外部システムとの連携まで可能です。連携作業を行う必要はありますが、データベースの拡張性が高いことがメリット。
配信ツールやキャンペーン型のCDPでは、従来の幅広いユーザーをセグメントとしてまとめるのではなく、より1対1に近いアプローチがを実現できることが強みです。
このようにCDPにはさまざまな種類があるため、CDPを導入する前には「実行する施策」「収集すべきデータ」など、企業ごとの設計図を作成することが重要です。
また新しいタイプのCDPも進化し続けており、異なるソフトウエアやモジュールを組み合わせていき、企業それぞれが自身のCDPを構成していくことができます。
主要なCDP
Salesforce Data Cloud(セールスフォース データクラウド)

出典:https://www.salesforce.com/jp/data/
世界シェア率トップのCRM/SFAツールを主力製品としている、セールスフォース社によるCDPです。セールスフォース製品との相性が抜群なことは言うまでもありませんが、外部製品との連携力にも優れているのがポイント。また、高度なAIを用いたデータ分析力も、他社製品と差をつけている部分です。対話式AIアシスタントによる、顧客ニーズに合わせた自動メール作成・コールセンターへの問い合わせ内容の自動ナレッジ化など、あらゆる業務における効率化を狙えるでしょう。
Treasure Data(トレジャーデータ)

出典:https://www.treasuredata.co.jp/
数あるCDPの中でも、特に知名度が高い「Treasure Data」。もっとも大きな特徴は、連携可能な外部ツールの豊富さです。合計170種類以上もの連携コネクターが用意されており、ノーコードでの実装が可能。そのためエンジニアによる実装経費の削減など、企業にとっては多くのメリットが生まれます。
KARTE(カルテ)アクショナブルCDP

出典:https://karte.io/content/actionable_cdp/
WEB接客ツールの導入実績が600社を超えたKARTEも、実はCDPの提供を行っています。シンプルな操作性でありながらも、データ統合・集計・分析などCDPの基本となる要素は揃っていることがメリット。知識や技術に不安のある方でも導入ハードルが低く、WEB接客に活用していきたい企業様におすすめです。
aimstar(エイムスター)

CDPとしての知名度が高い「aimstar」の特徴は、MA(マーケティングオートメーション)との連携の強さです。データの統合や分析はもちろんのこと、A/Bテストやコンテンツ作成などの実施まで可能。アパレルや金融など、業界別のシナリオが用意されているのもポイントです。さらにAIを活用したOne to Oneレコメンドやキャンペーンの自動作成までできるため、顧客に対するオファー精度を上げていきたい企業様におすすめです。
Tealium(ティーリアム)

「Tealium」は、自動的にユーザーアクションに合わせたデータ収集・統合を行うCDPです。SQLによる抽出が不要なため、専門的な知識や技術なしでもリアルタイムなデータ活用が可能に。また1,300以上の統合機能があり、すでに運用中のツールとの連携もスムーズです。たとえばユーザーへのフォローメール送信なども、Tealiumによって自動的に行えるようになります。顧客エンゲージメントの向上を狙っている企業様におすすめです。
CDPとその他データマネジメントソリューションの違いについて
データマネジメントソリューションには、CDP以外にもさまざまなタイプが存在します。ここからは、CDP・DMP・CRMをそれぞれ比較していきます。
データタイプの違い
CDPとCRMが扱うのは「ファーストパーティーデータ」、DMPは「サードパーティーデータ」を扱います。では「CDPとCRMはまったく同じデータを扱うのか?」といえば、そうではありません。
以下で、CDPとCRMが扱うデータタイプの違いについて見ていきましょう。
CDP | 行動データトランザクションデータ顧客属性データサードパーティーデータ 等 |
CRM | 連絡先情報トランザクションデータインタラクションデータマーケティングデータ 等 |
CDPで重視するのは、リアルタイムの顧客行動データやトランザクションデータで、複数のデータソースから自動的に収集と統合を行います。 一方でCRMは顧客関係管理に焦点を当てているため、同じファーストパーティーデータでも顧客との直接的なやり取りに関するデータが重視されます。
活用目的の違い
CDP | あらゆるマーケティング施策への応用 |
DMP | 広告マーケティングに特化 |
CRM | 顧客維持や営業活動のサポート |
さまざまなツールと連携できるCDPは、あらゆるマーケティング施策への応用が可能です。
一方でDMPは広告マーケティングに特化したものです。取り込んだ匿名識別子から類似モデルを作成し、広告システムと連携させていきます。
CRMは既存顧客の情報ややり取りを記録しておくもののため、既存顧客に対するマーケティング施策への応用、あるいは営業活動のサポートに役立てていきます。 既存顧客にフォーカスしたマーケティングを行う場合には、CRMでも十分に利益の向上を期待できるでしょう。しかし見込み顧客までを含めたマーケティングにおいては、CRMでは収集できるデータに限界があります。
データの保有期間について
データの保有期間については、CDPは制限なし・DMPは長くて6ヶ月程度で更新とされることが多いですが、一律に決まっているわけではありません。 扱うデータの種類や規制、活用目的など、さまざまな要因によって異なります。各ツールを導入する際には、自社で扱うデータ管理に必要な保有期間についても検討しておきましょう。
まとめ
今回はCDPとはどのようなものか?について、解説をしてきました。改めて、CDPの特徴をまとめておきましょう。
・ CDPではあらゆるチャネルのデータを一元化できる
・ CDPではデータ統合により「個人」としての顧客管理ができる
・ CDPはさまざまなビジネスツールと連携することができる
・ CDPの種類はさまざまある(自社のニーズに合うツールを選ぶ)
顧客データは、一度収集して終わるものではありません。「使用するデバイス」「好みの変化」「購買する頻度の変化」など、顧客1人1人のデータは、その生涯を通じてどんどん新しくなっていきます。
また将来的に、顧客のタッチポイントがさらに複雑化していくことも、顧客データ管理をする上で重要視すべきポイントと言えるでしょう。
CDPではこのような人と時代の変化に合わせ、データを最新の状態にしてくれます。